Masuk
「ハァ……ハァ……。くそっ……!」
肺が焼ける。喉が血の味でひりつく。 少年は石畳に膝をつきかけ、歯を食いしばって体を起こした。 脚が、動かない。 抉られたふくらはぎから熱いものが流れ落ち、足を引きずるたびに肉が裂ける感覚がした。 ――空が、赤い。 夜空に浮かぶ月が、あり得ないほど真っ赤に染まっている。 その光に照らされた街は、血の匂いと焦げた臭いで満ちていた。 昨日まで、ここは平和だった。 魔法と品物にあふれ、誰もが当たり前のように笑って暮らしていた国――キュアリーハート。 なのに、深夜零時。 赤い月光が国を覆い尽くした瞬間、世界がひっくり返った。 家々から悲鳴が上がり、次の瞬間にはそれが途切れる。 “何か”が、喰っている音。 骨が砕ける音。 走って逃げる足音が、途中で唐突に消える。 人々の大半は、化け物になった。 目が濁り、皮膚が裂け、獣のような爪が伸びる。 そして残った人間を、まるで遊ぶみたいに引き裂いていった。 対抗しようと魔法を放つ者もいた。 けれど化け物はびくともしない。 爪で人間の胸を裂き、心臓を喰らうたびに魔力が増し、動きが鋭くなっていくのが分かった。 「もう……ダメだ……」 少年は唇を震わせ、振り返る。 闇の中から、十数体。 爪が石を削る音が迫り、赤い月明かりの下で影が揺れた。 「俺も……俺も殺されるんだ……」 限界だった。 膝が折れ、冷たい石畳に倒れ込む。 化け物たちが一斉に飛びかかり、爪が少年の喉元へ振り下ろされ―― バチィィィッ!! 黒い閃光が弾けた。 衝撃が空気を割り、化け物たちが吹き飛ぶ。 壁に叩きつけられ、地面を転がり、呻き声が響いた。 「……あれ? 死んでない……?」 自分の体を確かめる。痛い。息も苦しい。けれど、生きている。 何が起きたのか分からず、少年は呆然と目を見開いた。 そのとき――どこかから、声がした。 (ふぃー……間に合ったか。危ねえな) 「……今、誰か……?」 周囲には誰もいない。 瓦礫と血の跡、そして赤い月光だけがある。 (んぁ? 見渡しても無駄だ。お前の“中”だ) 「……僕の、中……?」 胸の奥。頭の奥。 確かに“そこ”から響いてくる。自分のものじゃない、冷たい声。 (いいから聞け。あいつらはまだ起き上がる。次はお前が終わるぞ) 吹き飛ばされた化け物たちが、ゆらりと立ち上がった。 怒りで歪んだ唸り声が重なり、再び包囲が狭まっていく。 (衝撃だけじゃ足りねえか……チッ。なあ、クソガキ。生きたいか?) 「……生きたい!」 (なら契約しろ。俺の力をやる。その代わり――) 爪が光を反射して迫る。 少年は震える手を握りしめ、喉の奥から声を絞り出した。 「わ、分かった! 死にたくない! だから……契約して!!」 (あいよ。――成立だ) その瞬間、少年の内側で“何か”が笑った。 そして少年は、自分を守るために契約を結んでしまった。 それが、どれほど恐ろしい代償を呼ぶのか―― まだ、何も知らないままに。「いつもありがとうね、リーナさん。」「いえいえ、私にはこれくらいの事しか出来ませんので。」カイルの家ではカイルの母親とミーナの母親であるリーナが、皆んなの食事を作って準備していた。クレーアタウンを悪魔に襲撃され、住む家が無くなったリーナは娘のミーナと一緒に居候させてもらっていた。(第34話参照)家族以外の人が増えるという事は家事をする者の負担が増えるという事だが、主婦としての家事スキルが高いリーナのお陰でカイルの母親は物凄く助かっていた。「リーナさんが居てくれるお陰で家事がだいぶ楽になったわ。」「それに、あなたが作る料理はどれも絶品で凄く美味しいからね。今日も頼りにしてるわよ!」「ありがとうございます、カルラさん。」カルラとはカイルの母親の名前である。2人はお互い歳が近い為、普段カイル達が居ない間に家事を早く済ませ、暇になってから色んな話に花を咲かせていた。確かにリーナの料理は作るもの全て絶品であったが、彼女は料理の腕をずっと磨き続けていた。その理由は、いつかアガレフが帰ってきた時に沢山料理を食べてもらう為であった。自分の料理が好きだと言ってくれた夫に、沢山自分の料理を食べてもらう為に。しかし、その願いは叶わなかったが今はその料理の腕が誰かの為に活かされており、それがリーナにとっても嬉しい事だった。そしてカイル達がノーム王のところから帰ってきた。「ただいま帰りました、母上!」カイルが帰ってきた為、玄関から自分が帰ってきたと伝える声が母達の居る部屋まで伝わってきた。廊下からバタバタと多くの足音が聞こえてくる。他にも一緒に暮らしているミーナとエミル、フィナ、ライク、ニケルも一緒に帰ってきたからだ。そして帰った6人は母たちの居る部屋にゾロゾロと入ってきた。「皆んなおかえりー!ご飯もう少しで出来るからね。」「ありがとうございます、カルラさん。私も手伝います。」「私もやります!」フィナが言うとエミルも便乗し、カルラ達の手伝いをしようとした。「ありがとうね。助かるわ、フィナさんにエミルちゃん。2人にはちょっとこのスープの味を見て良い感じに整えて欲しいの。」カルラは殆ど作っていたスープの最終調整をを2人に任せた。フィナとエミルは2人とも料理が得意である為、時間がある時などはカルラとリーナに手伝いを頼まれる事があった。しかし、
………ここは、どこだろう?気付いたらそこは真っ暗な空間にミーナはいた。「ここは…旅に出る前に見た夢の中みたい。夢の中のはずなのに夢じゃないみたいな…」そう。ここは初めてミーナが夢の中で優しい心を持つグレンと出会った場所であった。「ミーナ。」この声は?そう思ったミーナは声のする方を向いた。そこにはあの夢の中で初めて出会った黒髪のグレンが居た。「あなたは、あの時夢の中で会ったグレン?」そう質問すると、何故か黒髪のグレンは涙を流しながら言った。「…お願い…助けて欲しい。」そう言ってグレンは闇の中へと消えていく。「え、ちょっと待って!どこ行くの!…ねぇ!」ミーナは呼び止めたがグレンは何も言わずに消えていく。夢の中で走っていると何かにぶつかる様な衝撃が伝わった。「痛っ!」目の前で誰かにぶつかってしまったのか、ぶつけられた人は痛みを口にした。「…ハッ!…夢か……。」「…もぉ。夢か…じゃないわよ。何時だと思ってるの?」ミーナとぶつかったのは隣で寝ていたエミルであった。時刻は既に午前2時を過ぎており、起こされたエミルは滅茶苦茶不機嫌そうにミーナを睨みつけていた。「ご、ごめんねエミル。変な夢見てしまって…。」「もぉ……」そう言ってエミルは再び布団を被って眠りについた。「(今の夢、何だったんだろ?あの黒髪のグレンが現れたって事は、現実のグレンに何かあったんだろうか?)」「…ちょっと駄目だ…もう、眠い…。」少し考えたミーナであったが眠気には勝てなかった為、彼女もすぐに布団を被って眠りについた。ミーナ達はクレーアタウンでアスモディウスと戦ってから10日程の日が過ぎ去っていた。カイルはクレーアタウンで起きた悪魔との戦いで、カレンが悪魔サイドに居たことを西の大国イフリークの騎士団達に無線で伝えた。騎士団達の反応はそれぞれ違っていたが、全員悲しみに暮れていた。特にエバルフ。彼はカレンととても仲が良かった為、敵となったカレンを聞いて現実を受け止めきれずにいた。イフリークに残った12騎士長は5人4騎士長、ウェンディー・ソルディア5騎士長、シキ・ラインハルト6騎士長、エレンシー・ガーデン7騎士長、アレックス・マーベルそして12騎士長、エバルフ・シュロンこの5人はカイルから聞いたレミールに残った騎士長達の訃報を聞き、後日直接レミー
2人が見た通り、確かにヒスイはグロードを助けた。それは紛れもなくその場で起きた事実である。しかし、2人の記憶による事実と今こうして実際に起きたヒスイが刺された結果が矛盾している。何があったのか?それはベリエルの持つ虚無の魔眼の力が原因である。[あらゆる事象に対する再試行]これはその時に起こった場面を無かった事にし、再度その場面をやり直す事が出来る力。例えるなら、(殴られた→やり直し→殴られる前に戻る。)といった様に、実際起きた事を無かった事にし、起きる前に戻る事が出来る。言うなれば、時を巻き戻す力に近い力である。この力は虚無の魔眼を見せた相手にのみ発揮する。先程2人に虚無の魔眼を見せたのはこれを行う為であった。南の大国シルフで、カイルがハイド(ベリエル)に優勢だったがそれを一気に覆されたのも、この力が原因である。(第18話参照)そしてグロードが気がついた時にはヒスイは既にベリエルの黒い槍に突き刺されており、引き抜かれたと同時に後方へと倒れていく。「ヒスイ!!!!」ヒスイが倒れていく姿を見て叫ぶグロード。何故こうなったのか、考える余裕さえ無い。目の前で妻が刺された事に対する怒りがグロードの心を真っ赤に染め上げる。そしてグロードは空間移動でベリエルの元まで転移し、ベリエルの胸ぐらを掴む。「ぐっ!…」この時、何故かベリエルは虚無の魔眼を見せてこなかったが、この時はそんな事が気にならないくらい怒りの感情のみがグロードを突き動かしていた。怒りが爆発したグロードは胸ぐらを掴んで動けなくなったベリエルの顔面を拳で連打した。「うおおおおおお!!!!」ガスッ!ガスッ!ガスッ!ガスッ!……!何度殴っただろうか。何故か無抵抗のベリエルをグロードは怒りのままに殴り続けた。そして、右拳に魔力を込める。全属性を操れるグロードは、右拳に全属性の力を纏った。全属性とは、基本属性である8属性(火、水、風、雷、土、空間、光、闇)。これらを全て併用すると、相反する属性同士が互いを弾き合う。普通に使えば術者に影響が及ぶ危険な行為。しかしグロードは呪いにより死なない不死身の身体である為、その様なリスクが無い。無尽蔵に溢れ出る魔力を、右拳に纏った全属性の魔力へ更に加算する。魔力が増えれば弾き合う力も更に強化される。グロードはその強大すぎる力を全て、ベリ
ラウスが産まれてから5歳になった頃。未だグロードはベリエルを見つけられずにいた。その日は休日出勤で働きに出ていたヒスイの代わりに、グロードがラウスの世話をしていたのだった。「お父さん!」グロードの所まで走って近づくラウス。ラウスは髪色は母親譲りの綺麗な白銀であったが、顔はどちらかというと子供の頃のグロードに似て優しそうであった。「どうしたんだ、ラウス?」「この魔法書に書かれてるやつが分からないんだけど、教えて欲しい。」ラウスはどうやら魔法書を見ながら勉強しており、グロードは分からないところを教える為に一緒に見た。ーーこうしてると、ベリエルに勉強を教えてた頃を思い出す。一瞬ベリエルを思い出したが、すぐにその思い出を振り払った。「(いかん!ラウスはあいつとは違う!あいつはもう弟じゃ無い。憎むべき男なんだ。)」グロードは邪念を払う様にして、そう自分に言い聞かせた。「どうしたの?」「あっ…えっと、何でも無い!…ここが分からないんだな?」グロードはラウスが聞いてきた分からない部分を見て驚いた。「(…これは…高等魔法の専門書じゃ無いか。とても5歳が理解出来るレベルじゃ無いぞ。)」ラウスは魔法の理解力が異常に高く、それは紛れもなく10歳で実用性のある魔法を発明していったグロードの血筋であった。「ここはな、こうだから……。」噛み砕いて教えたつもりだがどうしても難しい専門用語を使う為、高校生でも理解が困難なレベルであった。しかし、ラウスは。「ありがとう!それだけ分からなかっただけだから!」 そう言ってラウスは専門書を持って部屋に戻って行った。ーーあの難解な本の一部分が分からなかっただけ?「…凄いな。流石は、俺の息子だな。」5歳にしては凄まじい魔法の才能を発揮するラウスに驚いていたが、自分の息子がこれ程の才能を持っている事に対して誇らしくなった。それから7歳になって少し身体が大きくなったラウスは体術の面でも凄まじい才能を発揮していた。「やああ!!」ラウスは殴る時に上記の様な子供っぽい掛け声を出すものの、それまでの動きが凄かった。グロードは手加減してるものの、まるで次に動き出す足の動きが見えているかの様にラウスは予測していた。その様子をヒスイはちゃんと見ていた。その夜、ラウスが寝静まった時にヒスイから話があった。「あの子、
月の遺跡から現れた古の化け物達が世界中を暴れ回った事により、多数の他国の人が亡くなったこの事件は世界中で瞬く間に広がった。現去流時(げざると)で生き返るのは、同じ種族の人間のみ。つまり、月の民が生き返った事により他国の人間は殺されて亡くなったままであった。これにより、今回の首謀者は今まで古の化け物達を野放しにし続けてきた月の民の責任だと言われ、これが更に月の民達への差別が助長される要因となった。この差別は風化される事が無く、時間と共に他国からの恨みばかりが募っていった。一方、古の化け物達を倒し世界の人々を救ったと持ち上げられたグロード。彼は世界の英雄として一躍有名人となった。沢山の人に賞賛され、感謝される日々。中にはグロードが古の化け物達を倒した事を記す為、絵物語を書きたいと懇願してきた絵師も居た。ーーもう、好きにしてくれ。投げやりに全てを受け入れるグロードは、ほとぼりが覚めるまで、人々の"英雄ごっこ"に付き合った。そして50年が経った頃には彼の事を知る者が死に去っていき、その頃にはもうグロードの事を英雄と呼ぶ者は居なくなっていた。50年も経てば時代の流れもそうだが、人々の価値観や文化も大きく変わっていく。しかし、変わらないものもあった。1つは月の民の差別。これはいつまで経っても、古の化け物達が世界中を暴れ回り、その生まれ変わりが現在の月の民だと後世に語り継がれていた。その為、実際古の化け物達が暴れた所を見た事がない後世の人々も、月の民が恐ろしい存在であるという価値観だけ植え付けられていた。そしてもう1つ変わらない事がある。これは50年経つ前から感じていた事だ。歳を取っていない。グロードは40歳の姿から変化が見られ無かったのだ。何故変化が無いのか?それはベリエルが掛けた呪いのせいであった。ベリエルはリオ王国の人達を超月食の日に自身の生命エネルギーに変換させ、それによってベリエルは不老不死となった。そんなベリエルに掛けられた呪いにはある条件があった。「この呪いは、術者が死ぬまで継続されるものである。」つまり、これはベリエルが死ぬまで呪いが解けないという事だ。不老不死になったベリエルは死なない為、呪いを掛けられたグロードとアガレフも必然的に不老不死となってしまった。これが、2人が400年間死ぬ事なく生き続けてきた理
それからもグロード、アガレフ、ベリエルは共にリオ王国で平和な日々を過ごしていった。グロードはあれから魔法の鍛錬を積んでいったが、時々月の遺跡へ出向いてアマルとサマスに修行を付けてもらう事が増えた。アガレフもグロードと一緒に月の遺跡へ出向き、修行を付けてもらっていたが彼には既に沢山の弟子が居た為、都合が合わない日が多かった。そしてベリエル。彼はこの頃になると部屋に閉じ篭もる事が増えた。理由は分からないが、何を聞いても調べ物をしてるだけだと言い、詳しい事はグロードとアガレフに教えようとしなかった。一度気になったグロードとアガレフはベリエルの部屋に行ってみた。扉の前でアガレフがグロードに言った。「ベリエルの奴、朝から部屋でずっと何かしてるみたいなんだが…どうも様子が変なんだ。」「ああ。確かに変だ。ベリエルがこの部屋に閉じ篭もってる間、一切の魔力を感じないからだ。」異変に気付いたのはグロードも同じであった。魔力を感じない。というよりも、まるでそこにベリエルが存在していない様に感じられた。気になったグロードはベリエルの部屋の扉をコンコンとノックした。数秒待っても反応は無く、静かなままであった。「…やはり様子が変だ。扉を開けるか?」「待て、アガレフ。流石に勝手に入るのは…。」すると目の前の扉がギィィッとゆっくり開く音が聞こえてくる。中からは相変わらずクマが酷いもののいつもの変わりない表情と姿、そして魔力のベリエルが出てきた。「…どうしたの、兄さん達?」何故か扉の前にグロードとアガレフが居た為、キョトンとした表情で2人を見ていたベリエル。「…いや、…何でもない。ずっと部屋に閉じ籠ってるから心配になってな。」「そ、そうだ。偶には、外に出て身体を動かしたらどうだ?」さっきまで魔力が感じられなかったベリエルはまるでそこに居ない様な気配であったが、突然その場に現れた様な気配に2人は驚く。しかし、一先ずベリエルに変わりがない事を確認して2人は安心した。「……んー、確かにそうだね。偶には身体を動かさないとね。…明日、久し振りに兄さん達に稽古を付けてもらおっかな!」グロードとアガレフにそう言われて頭を傾げ、少し考える様な間が気になるがすぐに笑顔になった。それを聞いたグロードとアガレフもベリエルに釣られて笑顔になった。「ああ。勿論だ。」「
アガレフは家の前で見送ってくれるリーナと、彼女に抱き抱えられているミーナの方を見た。 あの赤ん坊の頃に比べると少し大きくなったミーナ。金髪で青い瞳に綺麗な顔立ちが、どことなく母親であるリーナに似てきた気がした。 「じゃあ、行ってくる。」 「…うん。ずっと、待ってるからね。」 そう言ってアガレフとリーナは最後の口付けをした。 そして最後にミーナの方を見た。 「おとー。おとー。」 手を伸ばしながらお父さんと呼ぼうとしてるミーナ。その純粋無垢な瞳には、今日を最後に会えなくなるなんて微塵も思っていないのが分かる。 アガレフはミーナの額に手を当て、撫でながら言った。 「ミーナ。これか
「ハァ、ハァ!カイル君、どこ行ったんだろ?」王宮へ走りながらカイルを探していたフィナ。死力を尽くして国を守った人が突然姿を消し、その安否が気になり気付いたら王宮の方へ走っていた。王宮までの距離は長く、近づくにつれ擬似・ブラックホールによる被害が大きくなっている。その悲惨な光景を見る度に胸が締め付けられる。「(ここの花屋さん、いつも店の人がニコニコしながら花の事教えてくれてたな…部屋に赤い椿を飾ったな。…あっちのパン屋さんではよく巡回してた時、こっそり買って食べてたな。)」そう考えてると悲しくなり、更に目から涙が溢れていく。何で、こんな事になったんだろ…幸せだった筈なのに。そし
グレンがネルの作った巨大な悪魔の化身を黒炎で燃やし尽くしてからも死闘は繰り広げられた。「うおおおお!!!」悪魔の手(デビル・ザ・ハンド)の力で離れた位置から殴ろうとするグレン。「そう同じ手に何度も掛かるわけが無い!反(リバース)魔法!!」ネルは反魔法による反発の力を全身から発し、遠距離から放たれる黒炎の爆発を弾いた。「フフフ!もうその拳を対処する方法は見つけたよ。」「ならばこれならどうだ!」右腕に発動した悪魔の手の力でネルを捕まえたグレン。そして、思いっきり右腕を内側に振り切るとそれと同時にネルは腕の振る方向へと吹き飛ばされ、周囲の建物を貫通しながらぶつかっていく。悪魔の手
ドゴーン!!!突如、騎士団の本部から東に2km程離れた王宮の半分が突如半壊するのが見える。半壊した王宮の瓦礫は町中に雨の様に降り注ぎ、建物を次々に破壊していく。その光景をシルフの魔法騎士団達は見ていた。「バグーラ団長!…たった今、王宮の半分が何かの衝撃によって崩れた模様です!」「これは…ここまで力の差があったとは…フィナ様…。」祈る様に手を合わせる中、バグーラ団長に更なる報告が降り注ぐ。「バグーラ団長!更に王宮の方から何やら大勢の人影が見られます!」王宮の方を見ると横一列から大勢の人が並んでこちらに向かってくるのが見える。その人々の正体とは。「何だあの人達は!悪魔の襲撃か







